投稿日:2018年5月18日

中川淳一郎さんがフリーライターに警鐘! これからライターはどうやって生き残ればいい? 五反田 #ライター交流会 vol.22 公式イベントレポート

第22回目の五反田#ライター交流会が2018年5月12日(土)、コワーキングスペース「CONTENTZ」で開催されました。テーマは、「おっさんが調子こいたフリーランスに警鐘! しぶとく生き残るライター処世術」です。

今回のイベントは、フリーライターの中川淳一郎さんと「#ライター交流会」のコラボ企画として実現。中川さんの上記ツイートに、ノオト代表・宮脇淳がリアクションしたのがきっかけでした。

イベント冒頭で、ツイートに込めた思いを中川さんはこのように説明しました

●中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう) 1973年、東京都立川市出身。編集者・ライター・PRプランナー。1997年博報堂入社、コーポレートコミュニケーション局(現・PR戦略局配属)。2001年退社し、無職→ライター→雑誌編集者→ネットニュース編集者になる。基本的に仕事は一切断らないが、むかついたらキレてそいつとの縁を切るスタイルは取り続け、そいつのことをネタにして原稿料を稼ぐ人生を送るようにしている。近著に『博愛のすすめ』(講談社・適菜収との共著)。Twitter : @unkotaberuno

「今、ライターは人気の職業で、SNSでも目立つライターがたくさんいます。しかしライター仕事にはかなり多様なスタイルがあって、仕事の獲得方法や生き方もさまざま。その実態がネットではあまり見えていません。だから、キラキラした目立つライター像だけが若手のロールモデルになってはまずい、と個人的に感じていました。だから今日は、SNSで目立たなくても仕事をしていけるし、ライター仕事のニーズがあることを、ゲストを交えてご紹介していきたいと思います」

司会の中川さん自身も、案件の90%以上は一切名前が出ない裏方仕事。基本的に目立ちたくないという姿勢を貫いているそうです。

そしてゲストに招かれたのは、10~25年以上フリーライターとして活動している3者。それぞれの異なる経歴や仕事のスタイルを持っています。中川さんが聞き手となり、ビール片手にゲスト一人ずつから「末長く文章で食っていくヒント」を探っていきます。

■中国に潜入取材! 体当たりの仕事もこなす・西谷格(にしたに・ただす)さん

1人目の西谷格さんは、新聞社勤務を経てライターとして独立。フリーライター3年目に上海へ渡航し、現地でホストのバイトやパクリ遊園地のスタッフ、反日映画への出演などの体当たり取材を繰り返してきました。着用しているTシャツは、近著『ルポ 中国「潜入バイト」日記』(小学館新書)です。

●西谷格(にしたに・ただす) 1981年、神奈川県生まれ。フリーライター。早稲田大学社会科学部卒。地方新聞の記者を経て、フリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地から中国の現状をレポートした。著書に『この手紙、とどけ!: 106歳の日本人教師が88歳の台湾人生徒と再会するまで』(小学館)など。『ルポ 中国「潜入バイト」日記』(小学館新書)では「反日ドラマに日本兵役として出演」「パクリ遊園地で七人の小人と踊ってみた」などを記す。 Twitter:@nishitanitadasu

中川:2009年ごろ日本では、中国に対して悪い印象のニュースが多かったはず。どうして中国に行こうと思ったのでしょうか?

西谷:渡航のきっかけは、ネットで現地の日本人向けフリーペーパーの求人があり、それに応募したからです。当時は上海万博の直前で、中国経済の成長気配がありました。僕自身、日本でライターをやっていくのに行き詰まりを感じていて、この先どうするかに悩んでいたからこそ、日本よりも上海を選んで渡航したといいますか。

中川:中国語もできるようになって帰国した、と。今後は中国に詳しい識者としてのポジションを取りにいくんですか?

西谷:もちろんそれだけではないですが、中国に詳しいライターとしての仕事は、やっていきたいですね。自分だからこそ取材しやすいテーマが中国なら、またぜひ行きたいと思っています。

中川:「中国だったら、この人かな」というポジションになっておくと、それですごく仕事が来る。しかも対応が良ければ、どんどん来るようになる。それは強みになりますよね。

西谷:そういうことにしておいてください……(笑)。あと強みをしいて言うならば、ライター仕事ではあまり自己表現を目指していません。発注してくれた側の願いを叶えるのを第一にしています。

中川:なるほど。僕を含めた今日の登壇者は、年齢は違うけれど、全員が「小僧っぽさ」を共通で持っていると感じています。たとえば、年上の人からかわいがられて、「君」付けかあだ名で呼ばれていたり……。その「ちょっとしたかわいげ」が発注につながっているのはないか、と思っています。

■Twitterよりも対面を重視――毎日新しい人に5人会う・神田桂一さん

2人目の登壇者は、紙媒体もWebもこなすフリーライターの神田桂一さん。文豪の文体模写でカップ焼きそばの作り方を書いた『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(宝島社・菊池良と共著)がベストセラーになりました。中川さんは、そんな神田桂一さんのことも「かわいげ」のあるライターだと紹介します。

●神田桂一(かんだ・けいいち) ライター・編集者。一般企業勤務から、週刊誌『FLASH』の記者に。その後、ドワンゴ「ニコニコニュース」編集部などを経てフリー。雑誌は『ポパイ』『ケトル』『スペクテイター』『クイックジャパン』などカルチャー誌を中心に活動中。『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(宝島社・菊池良と共著)が第二弾と合わせて累計15万部のベストセラーに。その他の寄稿としては『お~い、丼』(ちくま文庫)など。 Twitter:@macbookairbot

中川:『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』は、すごく売れましたね。

神田(桂):僕は企画が面白ければ、絶対に口コミで広がると思っているんです。だから自分の知名度はそんなに重要視していません。焼きそばの本は最初、書店員さんが推してくれたのもあって、販売の初速が良くて。僕と共著者の菊池良くんはどちらも当時無名でしたから、企画がよければちゃんと売れるんだな、と。

中川:今、Webの口コミとかも重要だと思いますが、神田君はTwitterとかはあまりやっていないですよね。ライターとしての知名度と、本が売れるかどうかの関係性はどう感じますか?

神田(桂):Twitterは、わざとあまりやらないんです。フォロワーも300人くらいだし、Twitterをやると面倒なことも起こりやすいので。天秤にかけるとデメリットの方が多い気がして。それなら編集者にリアルに売り込みをかける方が効率的ではないかと思っています。

中川:神田くんも、多くの編集者や先輩方にかわいがられているけど、それはどうしてだと思いますか?

神田(桂):自分では、何がいいのかわからないですが……。『FLASH』時代は上司から「とりあえず上流の人間と仲良くなれ。そして、毎日新しい人に5人会え。そうしたら記者として1人前になれる」と教わったことがあって。それは今でも実践していますね。そこから、何かしら仕事なりアイデアなりが生まれていく。僕が今、ここに出てお話させてもらっているのが、その効果の証明ではないかと思います。

■50代でも現役! 営業はせず、文章で仕事をもらう・神田憲行さん

そして3人目のゲストは、54歳現役フリーライターの神田憲行さん。ライター活動を継続しつつ、昨年には某業界最大手のウェブニュースサイト編集デスクに就任しました。司会の中川さんは、現在44歳。「10年後にこうやって働き続けられるか不安だからこそ、最後の登壇者に神田憲行さんを選んだ」と話します。

●神田憲行(かんだ・のりゆき) 1963年、大阪市生まれ。関西大学卒。ジャーナリストの故・黒田清の弟子を経て、26歳ぐらいから筆1本の生活を四半世紀。最新刊『謎の進学校麻布の教え』(集英社新書)は5刷。ゴーストライター、週刊誌のアンカーマンの経験もあり。得意分野はベトナム、高校野球、歌舞伎町のホスト、日本国憲法。ライター業の傍ら、2017年から某ニュースサイトのデスクを兼務。
Twitter : @norikan2

中川:たくさんのライターや編集者がいる中で、何が目に止まって神田さんが某ニュースサイトのデスクに選ばれたんでしょうか?

神田(憲):もともとそこでライターとして書いていて、誘われました。そもそも僕の仕事の獲得方法は、ほぼ全て文章なんですよ。僕の記事を読んで、会いませんか?と声がかかる。ゴーストライターとかも、文章がきっかけで仕事の引き合いが来る。

中川:営業はしないのでしょうか?

神田(憲):僕はほとんど営業をしたことがないし、書籍でも企画書を書いたことがありません。いい記事が出ると、知らない人からメールが来て、仕事が決まる感じですね。

中川:50歳を超えても、一線で活躍して物を書いている神田さんだからこそ、何か特別にやったことは?

神田(憲):それが別にないんですよ(笑)。ただ僕は「文章の職人」みたいな意識でやってきました。だからたまたまなんでしょうけど、中川さんにTwitterで「職人芸」と紹介いただいたのはすごく嬉しかった。

徹底的に心がけている視点があるとしたら、僕は若い頃を除いて編集者向けに原稿を書いたことがありません。ずっと読者を向いて書いている。今のWebメディアで仕事をしている人の議論を見ていると、「クライアントに受けるには」「編集者に好かれるには」みたいな議論ばかり。もっと読者を意識した方が良いと思います。

たとえば、絵を描く時に水彩や油絵があるように、僕はライターとしていろんな種類のペンを持っている。そして媒体とネタによって、自分のペンを変えて書く感覚が僕の中にある。エロい記事を書くんだったらこの筆を使うか、みたいな。よくライターは専門分野を持てみたいなことを言われがちですが、僕はそういうのも特にないんですよ。

中川:神田さんにとって、「憲法」や「ベトナム」も専門分野ではない、と?

神田(憲):そりゃ、全く知識がない人よりあるけど、憲法学者よりは知識はありませんからね。そんなのは専門分野とは言えない。でも、取材力と文章力があるからこそ、その分野においても仕事になっていくんだと思いますよ。

■地方からの参加者も! 質疑応答、交流会へ……

イベント後半は、質疑応答が行われました。香川や奈良から来たという参加者の姿もあり、かなりズバズバと切り込んだ質問が飛び出す展開も……。トークセッションの最後は、中川さんから参加したライターの皆さんに向けた”警鐘”で締めくくられました。

中川:この数年で突然、広告費がWebに落ちてくるようになり、Webでのライター需要が急激に膨らみました。しかし、日本は少子高齢化で人口はこれから確実に減っていくし、日本語は世界では通用しない超ローカル言語なんですね。さらにこれから、Webの広告効果が冷静に見直されて、化けの皮が剥がれていく。広告価値がないとみなされたWebメディアは淘汰され、Webメディアで書いている人の仕事がなくなるような、やばい状況に陥るんじゃないでしょうか。ここにいる皆さんは、「今が最高にイケてる状況だ」という気持ちを持って仕事をしてほしい。それが今日の結論です。

トークセッション終了後は、登壇者や参加者同士の交流タイムへ。ケータリングの軽食を食べながら、お酒を飲みながら、同業者同士で楽しいひとときを過ごしました。

ハッシュタグ「#ライター交流会」で感想のツイートやレポートをしてくれた参加者もいました。その一部をご紹介しましょう。

ご参加いただいたみなさま、誠にありがとうございました。今回は中川淳一郎さんとのコラボ企画でしたが、五反田#ライター交流会は今後も開催していく予定です。ユニークなゲストを招いたり、興味深い企画を立てたりしますので、またぜひ次回ご参加ください!

(文:鬼頭佳代/ノオト)

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コワーキングスペース・スタジオ Contentzは、2024年4月30日をもって閉館しました。仕事場として、イベント会場として、長らくご愛用いただき、誠にありがとうございました。

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