投稿日:2017年5月26日

フリーランスの女性ライターはどう生きていく? #ライター交流会 イベントレポート

2017年5月13日、東京・五反田のコワーキングスペース「CONTENTZ」で月例のライター交流会が行われました。トークセッションのテーマは「女性ライターの働き方」。

参加者の9割が女性という和やかな雰囲気の中、登壇したのはフリーランスの女性ライター2人と女性編集者1人。女性ならではの悩みやフリーランスの働き方についてトークが展開されました。

【登壇者プロフィール】

■池田 園子(いけだ・そのこ)

DRESS編集長。楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは生き方や働き方、性、家族制度、プロレスなど。DRESSプロレス部 部長補佐を務める。編集協力した書籍に『すべての女は、自由である。』(経沢香保子)、『さよならインターネット』(家入一真)、著書に『はたらく人の結婚しない生き方』がある。
Twitter:@sonoko0511

■姫野 ケイ(ひめの・けい)

宮崎市出身。大学時代は出版社でのアルバイトとヴィジュアル系バンドの追っかけに明け暮れる。日本女子大学文学部日本文学科を卒業後、バンギャル活動を優先して一般企業へ就職。しかし、やはり書く仕事がしたく、3年勤めた後退職。フリーのライターへ。『週刊SPA!』『実話ナックルズ』『週刊大衆ヴィーナス』などの男性向け雑誌の他『サイゾーウーマン』『ねとらぼ』『V系キタコレ!』などのWeb媒体、ヴィジュアル系バンドのフリーペーパーや大学のパンフレットなども執筆。得意分野は社会問題系やゲスいエロ系、ヴィジュアル系バンド。
Twitter:@keichinchan

■井上 こん(いのうえ・こん)

フリーライター。明治大学農学部を2年で中退し、アルバイト生活を経て2013年フリーライターに。現在、食分野を中心にウェブや雑誌で執筆。また、年間400~500杯食べるうどんマニアでもあり、2016年から開始したブログ『うどん手帖』をきっかけにうどん関連の仕事も増加。うどんに詳しいライターとしてCBCテレビ『花咲かタイムズ』、日本テレビ『誰だって波瀾爆笑』に出演。
Twitter:@koninoue

■田島 里奈(たじま・りな)

有限会社ノオト所属の編集者。働いていた地元のキャバクラで待機中に、mixiニュースでノオトを知ったことがきっかけで編集者に。ノオト入社と同時に上京し、その後結婚して子どもを1人出産。
Twitter:@tajimarina0115

●女性フリーランスの一日って?


田島:司会を担当する有限会社ノオトの田島里奈です。よろしくお願いします。

今日は、「女性ライターの働き方」というテーマでゲストをお招きしています。まずは、自己紹介と一日のスケジュールを教えていただけますか?

池田:編集者の池田園子です。『DRESS』という女性向けサイトの編集長をしています。他には、不動産投資やマーケティングなどの媒体、体験型取材なども行っています。

一日のスケジュールはその日によって違うのですが……朝、自宅でDRESSの記事の編集をして、その後取材に1~2件行くことが多いですかね。外で取材や打ち合わせがない日は、ひたすら家にこもって編集をしたり、記事の執筆をしたりしています。

姫野:ライターの姫野ケイです。紙媒体は『週刊SPA!』や『実話ナックルズ』、『週刊大衆ヴィーナス』など、Web媒体は『サイゾーウーマン』『ねとらぼ』などで書いています。過去にバンギャだったこともあり、ヴィジュアル系のフリーペーパーなども担当しています。

週刊誌のスケジュールがかなりタイトなので、週3~4日は取材に出て、多いときは一日に3~4本取材があることもありますね。執筆は基本的に自宅で行いますが、取材帰りにカフェなどで書き上げて帰ることもあります。

井上:ライターの井上こんです。いまは飲食系の雑誌やウェブ媒体をメインに書いているのですが、インタビューやスポーツ系の仕事など、いただいたものはできるだけ引き受けるようにしています。

Twitterでうどん好きを公言していたら「うどんの人」のイメージがついたのか、うどん関係のお仕事もいただくようになりました。飲食店を紹介するためのロケハンがあるときには、2~3日で20軒まわることも。集中して執筆する日は、朝の4時ごろまで仕事していることもありますね。

田島:ありがとうございます。では、トークに入っていきましょう。前半は、こちらの用意した質問にお答えいただく形で進めていければと思います。

●女性ライターならではの苦労ってありますか?


田島:最初の質問はこちら。「執筆や編集を職業としていて、『女性ならでは』の苦労はありますか?」。井上さんはどうでしょうか?

井上:当たり前ですが、男性と比べると体力は劣りますね。一日に何本取材を入れられるかなど、仕事の量や内容を考えつつ案件をお引き受けしています。

田島:取材は体力使いますよね。私は取材、1日1本が限界です……。

池田:私はいまのところ、編集ライター仕事における性差を感じたことがあまりなくて。体力という点に関しては、自分に無理をさせすぎないように意識はしていますけどね。

姫野:体力といえば、以前、忙しくしすぎてしまって、体調を崩してしまったことがあります。婦人科系の病気にかかってしまいまして……。

「自分は体力的に男性と同じようには働けないな」と思うのであれば、拘束時間の長い体験取材などは少なくして他の案件でカバーするとか、専門的なジャンルを持って記事の質を高めるとか、ライターとしては何か対策を考えないといけないのかもしれませんね。

田島:フリーランスの方が体調を崩すのは、本当に死活問題ですよね。今回は「女性ライター」というテーマで、やはり切り離せない話題が妊娠出産だと思うんです。私自身は独身時代にノオトに入社して、結婚して子どもが生まれて、ライフスタイルがかなり変わりました。

実際に、泊まりがけの遠方出張は担当できなくなったり、子どもの体調不良で予定していた取材に行けなくなったりしています。私が自動車案件をメインにやっていたこともあって、以前はかなり地方出張が多かったんですね。ですので、妊娠出産時はほとんどライティングを担当せず、ライフスタイルの変化に合わせて自動車案件以外の割合を多くしたり、ライティングの割合を減らして編集をメインにシフトしたりしました。

もちろん、急なトラブルで仕事に穴を開けてしまうのは、女性に限った話ではありません。ちょうど先日、姫野さんがブログに書かれていた「フリーランスの身内に不幸があったときに、ライターはどうするの?」という問題にも通じる部分がありますよね。

▼フリーランスの身内に不幸が起こったら仕事をどうすべきか問題(note)
https://note.mu/himenokei/n/n7a006ba36019

田島:姫野さんのお祖父さまの調子が悪くなったのだけど、ムック本40ページの〆切を抱えている状態で地元に帰るに帰れず、「非人情的かもしれないが、どうか、仕事が忙しいときに死なないでくれ、どうか空気を読んでほしいと思ってしまった」と書かれていましたね。

姫野:そのときムック本の仕事があったので、10日間で40ページを書かなくてはいけなくて、実家に帰れる状況じゃないなと……。ムック本の案件がなかったとしても、私がいつも担当させていただいている週刊誌だと、ネタ出しから校了までが2週間、その中で取材が1週間、執筆にあてられるのは1日なんです。そのタイトなスケジュールの中で何かが起こってしまったら本当にどうするんだろう、と。

田島:週刊誌のライターさんは、実際どうしてるんでしょうか?

姫野:以前、結婚して子どもができたらどうすればいいのか、週刊誌の編集さんに相談したことがあるんですけど、いろいろやり方はあるそうです。例えば、取材だけ担当してテープとメモを渡すとか、逆にテープとメモを渡されて執筆だけ担当するとか。

あとは、一度原稿を出した後は、もうその記事に関与しないとか。つまり、修正依頼を受けずに、担当の編集さんにそのまま直してもらっちゃうというやり方ですね。週刊誌の直しって、夜中に連絡が来たりもするので、子どもがいる生活だと対応が難しいかもしれません。

ただ、そういう「時間的縛りの少ない働き方」にシフトすると、当然ながら原稿料は少なくなってしまうので、お金の問題はありますよね。自分が書かせていただいている週刊誌のクレジットを見ると、女性の名前も載っているんですけど……。もしかしたら、子どもがいながら週刊誌のライターを継続できている女性は少ないのかもしれません。

●40歳・50歳・60歳になったとき、どう生きていたいか


田島:次の質問です。「40歳、50歳、60歳のときにどんなふうに生きていたいか教えてください」。池田さん、どうでしょうか?

池田:40歳のときの理想としては、何かしらの専門分野で執筆と編集ができていたらいいなと思っています。いまは広い分野を担当しているので、これは!というものを身につけて、生き残っていけたらいいな、と。

50歳、60歳のときは……うーん、40歳はいまから10年後なので想像しやすいんですけど、50歳、60歳はまだあまりイメージができないですね。

田島:先ほどの「トラブル時の対応」に通じる話ですが、自分の専門分野であれば、子どもの体調不良などで取材に行けなくなってしまったとしても代案を出せたり、もともとこの取材先はよく知っているから今回は電話取材に切り替えてあとで写真を送ってもらったりするなど、できることはありそうですよね。

ちなみに、池田さんは60歳のとき、編集・ライターをやっていると思いますか?

池田:完全にやめることはないと思います。いま自分が興味を持っているのが、健康やアスリートのセカンドキャリア、プロレス、海外の食などの分野なんです。これに関連して、今後いろんなところに興味が出てくると思うので、そこに編集・ライティングの力を使って関われないかなと、ぼんやりとですが考えています。

田島:編集・ライティングをやりつつ、深堀するテーマがその時々で変わっていく感じですね。

姫野:得意分野はあるんですけど、専門分野はまだなくて。今年の2月に、愛玩動物飼養管理士の資格を取ったんです。そのジャンルを専門分野として極めて行けたらいいなと思っています。もともと動物が好きで猫と暮らしていて、「姫野さんだからこの記事(動物関係の記事)をお願いしたい」という依頼をいただいたこともあるので。

あと最近、大学のパンフレットの執筆をしたんです。それで、「若手じゃないからこそ書けるものもあるんだ」と気づきました。かっちりした仕事はベテランだったり、ある程度年齢を重ねていたりした方が、クライアントや取材先に安心感を持ってもらえるのかなと。

田島:60歳となると約30年後ですが、そのときはまだライターを続けていると思いますか?

姫野:理想を言えば、ライターではなく作家になっていたいですね。作家でなくとも、何かしら書くことに通じる仕事をしていたいです。

田島:井上さんはどうですか?

井上:将来はいまの判断の積み重ねだと思っているので、今日や明日の判断を大事にしていきたいと思っています。でも、そう思う反面、何を選んでも死ぬわけじゃないっていう気持ちもあって。軸足を固定させながら身体の向きをクルクル変える、バスケットボールでいう“ピボット”のような状態でありたいですね。

●今後の仕事や人生について不安に思うこと

田島:みなさんは、今後の仕事や人生について、どんなことに不安を感じますか? また、すでに何か対策を考えている、実行していることがあれば教えてください。

姫野:そうですね、やっぱりお金の問題です。貯金を頑張っています。

田島:先ほど、週刊誌のスケジュールはタイトだと伺いましたが、何歳ごろまでその仕事を続けられると思いますか?

姫野:できても34~35歳までかなと思っています。

田島:私がWeb媒体を中心に活動しているからかもしれないんですけど、50代、60代の女性ライターさんをほとんど知らないんです。それをTwitterでつぶやいたら、紙媒体には結構いらっしゃるというお話を聞いたのですが、それは月刊誌とか書籍の話なのかな。週刊誌だと若手の方が多いんですかね?

姫野:週刊誌の仕事をしているのは、だいたいが20代後半とか30代中心だと思います。その後は、編集プロダクションに所属したり、自分で会社を立ち上げたりする人を見かけますね。週刊誌はスケジュールがタイトで体力がないとキツイっていうのもあるんですけど、ライターが若手だと編集者が指示を出しやすいのもあるかもしれません。なかなか、年上の方に体当たり取材のお願いはしづらいと思いますし。

田島:井上さんは今後について、何か対策をしていますか?

井上:最近、ほんの少しですが営業をするようになりました。これまでは「いただいたお仕事をなるべく引き受けて全力でやります!」というスタンスで、いまのままでも収入的には問題はなかったのですが、この先も長く仕事を続けていけるよう、ある程度狙ったところに球を投げられるようになりたいなと思って……。具体的には、自治体や大きな広告代理店に企画を提案しています。

池田:姫野さんもおっしゃっていましたが、やはりお金の悩みはありますよね。私は税理士の先生に経理を見てもらいつつ、数年前から節税や投資などの勉強をしています。あとは、健康面ですね。定期的に検査に行ったり、意識して睡眠や休養をとったりして、倒れることがないようにしています。

田島:フリーランスは、本当に身体が資本ですよね。知り合いに、事故で3カ月間入院することになって、病室にPCを持ち込めない、携帯電話の使用も限られたスペースでという状況に陥ったライターさんがいて。結局、抱えていた案件のほとんどを仲の良いフリーライターさんに代打でお願いして、自分が復帰するときに困らないようにしてもらったそうです。

姫野:それはすごいですね。組織に所属していないからこそ、フリーランス同士のネットワークを作っておくのは大切な気がします。

井上:私、体験取材中にアバラにヒビが入ったことがあるんですよ(笑)。「一日でバク転を習得できるのか」という企画で。そのときに、家でできる仕事を持っておくことの大事さを痛感しましたね。

取材に行かなくてはいけないものと、電話やメールでの取材など家から出ずにできるものと、リスク分散できたら一番良いのかなと思います。あと、Web媒体だとライターからの企画を常時受け付けている編集部は多いので、自分で収入のコントロールをできるところとお付き合いしておくことも大事ですね。

田島:「いまこういう状況で、家でできる仕事はありませんか」と相談できる編集者さんがいるといいですよね。それは、通常時の仕事ぶりやお互いへの信頼度などで関係性を構築できると思うので、普段から「相談できる仕事相手」を意識して関係づくりをしておきたいところです。

さて、トークセッション後半は、参加者のみなさんからの質問に答えていきたいと思います。

<Q&Aタイム>


Q.井上こんさんに質問です。うどん関連の案件で、印象的だった仕事はありますか?

井上:うれしかったのは、出身地である福岡関連のお仕事ができたことですね。「そんなにうどん好きなら、食べて、書いて!」と依頼をいただいて。福岡市のメディアに掲載されています。

田島:自治体の仕事って、地元に住んでいる、もしくは出身のライターさんにお願いするのが一番良いんですけど、地方自治体が東京の大手代理店に依頼して、結局は東京のライターさんが地方へ取材に行くケースがありますよね。ノオトが地方のライターさんと多くつながることで、そういう状況を少し解消できたらなとも思います。

Q.編集者のお2人に質問です。ギャラの交渉や設定方法について教えてください。

池田:私の場合は、取材があるかないかが最初の判断基準になります。あとは、これまでさまざまな媒体で書いてきたことで相場感をなんとなく掴めているので、それを参考に決めています。

田島:ノオトの場合は最初に案件の予算が決まっている仕事が多いので、ライターさんにお支払いする金額も案件のオファー時に決めています。こちらからまず仕事内容とギャランティをお伝えして、金額的に厳しければ断っていただく形ですね。ひとつの案件でお断りいただいても、またほかの案件で「こちらはどうですか?」と聞いてみることはありますし、それで今後お仕事を頼むことがなくなるということにはならないですね。

Q.いまは会社員で、ライターを目指しています。 フリーライターって食べていけますか?

井上:うーん、一気に転職を選ばなくても、副業としてライターの世界に入りながら、少しずつ軸足をライターに移していくのもいいんじゃないかなと思います。フリーランスは大変なので……。

姫野:私は2013年の4月からフリーになったんですけど、最初の売上が月額15万だったんですよ。ギリギリ生活できるくらい。とりあえず生活できるくらい稼げれば、フリーになってもいいのかなって思います。

池田:私は、2012年の2月に独立して、当初は月収10万円でした。ただ、貯金が400万くらいあったので、しばらくは貯金を切り崩すことになるかもしれないけど、頑張っていけば収入は増えていくだろう、と。

でも、もしいま貯金があまりなくて、お金に関して不安を感じる場合は、ライターの仕事ではないバイトをしたりとか、本来目指すべき方向じゃないところに時間を費やしたりするかもしれません。最初に編集プロダクションに就職して、修行をさせてもらってから独立するのがいいと思いますけどね。知識やライティング経験がない場合、一から始めるのは大変なので。まずは基礎となる力を養うのもいいのかなって思います。

田島:会社を辞めていきなりフリーランスになると、執筆や取材について誰に教えてもらうの? 困ったときに相談する人は? なんてなってしまいますからね。まずは、いま所属している会社を辞めずに、休みの日にライター講座に通うのもいいと思いますよ。宣伝会議さんとか、学びの場はいろいろありますから。

師匠も先輩も仲間もいない状況で、急に一人で始めるのではなくて、通っている講座で相談できる先生を見つけたり、まわりの人と話して質問してみたり。あとは講座に編集者など発注者が来ることもあると思うので、仕事をくれるつながりを見つけたりして、だんだんとライター業界へ入ってくるのがいいのではないかなと思います。


Q.仕事がゼロの状態から、どのように最初の案件を得たか教えてください。

井上:私は2013年頃、ゼロの状態からフリーライターを名乗り始めたんですが、まずは某Web媒体のお問い合わせフォームから申し込みましたね。その媒体は別にライターを募集していたわけではなかったんですが、聞くだけタダだと思って。それでテスト記事を書いてOKをもらって1記事1,000円から始めることになりました。公開されたその記事のURLを実績として、今度は少し大きい媒体へ売り込みにいって、1記事のギャラが15,000円に上がり、そこで身体を張る取材などいろんな経験をさせてもらいました。

そして、さらにまたほかの編集部に売り込みに行って……という雪だるま方式です。私は顔出しOKなので、ローションをかぶったり、レンタル彼女の潜入取材をしたりして、何でもやりましたね。そんなことを1年くらい続けていたら、営業しなくても仕事を依頼してもらえるようになりました。何かしら目に止まるところに文章を出してポートフォリオを持っておけば、最初の営業もしやすくなるんじゃないかなと思います。

姫野:私は出版社でアルバイトをしていたので、その時代に知り合った編集者さんに営業をし、仕事をもらいました。あとは、知り合いでライターをしている人に編プロをを紹介していただいて、記事を書かせてもらいました。最初は1記事3,500円だったのを覚えています。あとは、ネットで検索して上位に出てきた編プロに、自分のプロフィールを片っ端から送りました。返信があったのは10社中1社とかでしたけどね。

池田:私はまだ会社員だった頃、まずは誰でも記事が書けるサイトで、恋愛記事を無料で書きました。その記事のURLを実績として持って、書きたい媒体に応募していきましたね。あとは、たまたま編集プロダクションの社長を取材する機会があって、そのつながりで仕事をもらったりしました。

田島:なるほど。皆さんが言っているとおり、まずは編集者やディレクターといった発注者と出会う、コンタクトを取ることが大事ってことですよね。それで、その人がどんな媒体をやっているのかを聞いたり調べたりして、「あなたの媒体でこんなネタを書きたいです」と企画を送る、と。単に「仕事ください」とプロフィールや実績を送られてきても、「何が書けますか?」というところからやり取りするのは時間がかかるので、最初からいくつかネタを出してもらえると、編集者としてもありがたいですね。

Q.「こういうライターは強いな」と思うのは、どんな方ですか?

池田:『DRESS』の編集業務の中で、ライターさんについて考える機会は多いんですが、アイデアを出してくださる方や最後のツメがきちんとできている方はやっぱり助かります。あとは、編集者を気遣ってくれる方はありがたいですし、また仕事をお願いしたいなと思います。

姫野:他のライターさんを見ていて、専門性があったり書籍を出していたりすると名刺代わりになるので、そうなると強いな~と思います。あと、フットワーク軽く、すぐ動けることですね。

井上:いますぐできることで考えると、レスの速度ときちんとした状況報告ですね。仕事ができて忙しい人ほどレスが早いと言いますし、原稿のやりとりをする中でも「今日は終日取材で外出しています」とあらかじめ伝えてもらえれば、対応する側も自分の仕事の目処がつけやすいので、そういった気遣いは大切だと思います。

田島:私がすごいなと印象に残るライターさんは、「この媒体でこの時期にこのネタをやる意味」をきちんと考えてくれる人ですね。ネタ出しのときに、他の媒体の記事を参考URLとして貼って、ただ単に「この人を取材したい」と言われても、「もうこの記事が世の中にあるからいいじゃん。うちの媒体でやる意味は?」って思ってしまいますよね。「この媒体の理念と掛け合わせると、こういう切り口で取材できる」というのを提案してくれるライターさんですと、インタビューも素晴らしい仕上がりになります。


Q.枕営業を疑われたことはありますか?

姫野:私はないですね。知り合いのライターさんで、やっていた人はいましたけど。

田島:えっ、本当ですか!?

姫野:枕営業というか、連載している雑誌の編集長から「俺とやらないと連載切るぞ」と言われたらしいです。

田島:それはある意味、脅迫ですね……。

姫野:10年前とか、それぐらい前の話らしいですけど。

井上:やっぱり、弱い立場にならないよう一つの得意先に頼らずに、いろんなところと仕事ができる状況にしておくのは大切だと思います。

田島:フリーランスは「守ってくれる組織がない」ということを意識した方がいいかもしれませんね。女性は特に、身体の関係を迫られるとか、そういう危険も多くなりがちなのかな、と。

枕営業の話とはちょっと話が離れちゃうんですけど、取材先への原稿確認のときに「一緒に食事に行かないと原稿チェックしない」と言われたというのは、身近で聞いたことありますね。

池田:あ、私もそういうことがありました。取材が終わった後、取材対象者の男性からご飯に誘われたことがあって。原稿チェックが終わって原稿が掲載されるまでは……と考えてしまって、はっきりと断れなくて困りましたね。結局、「原稿チェックしません」と言われてしまい、掲載できずに終わりました。クライアントから原稿料ももらえなかったです。

田島:それはひどいですね……。

Q.執筆に行き詰まったとき、壁にぶつかったときにどうやって乗り越えましたか?

井上:執筆に行き詰まったとき。……うーん、私はあんまりないかもです。構成を考えて最低限リードさえ書けば方向性が見えてくるので、そこまではとにかく書く! マラソンと同じ感覚ですね。そこまでやったら仮眠してもいい、みたいなマイルールを決めています。

田島:私はもともと原稿執筆に取り掛かるのが遅い方だったんですよ……。でも最近は、取材後すぐ本当にざっくりとした第1稿を40分くらいで書いておくようにしたら、すごくうまくいくようになりました! コツは、どんな適当な文章でもいいからとにかく書くことと、そのときは音源を聞かず記憶だけで書くこと。取材して、音源を聞かなくても印象に残っているところが、記事のヒキになるところかなと。

なので、思い出せるところを中心になんとなく構成を組み立てつつ、書きたいところから書いていく。よく思い出せないところや正確な数字、事実確認が必要な箇所は「~~~」「○○○○○」みたいに、とりあえず仮に書いておいて、全体像を作り上げることを優先させています。細かいところは、あとで調整・推敲すればいいので。


Q.仕事上、コミュニケーションで気をつけていることはありますか?

池田:原稿のやりとりってメッセージやメールが多いので、冷たい感じにならないよう、元気な感じを出すようにしていました。「!」マークをつけてみたり、文章に熱を込めるようにしていたりして、意識しています。

姫野:Web媒体は基本的に会って打ち合わせすることが少ないので、編集部で交流会があるときには積極的に参加した方がいいなと思います。顔を見て話すと、メッセージ上とは違う印象を受けることも多いですし、メールの文面だけ見て怒ってるのかな? なんて誤解も解けます。

井上:私はお仕事をもらって自分が引き受けられないときに、余裕があれば知り合いのライターさんを推薦しますね。そうすれば、編集者さんが別の方を探す手間がはぶけるかな、と。

田島:フリーランスのライターさん同士で、仕事の融通ができるっていいですね。同じ立場で、こういう仕事あるみたいだよっていう話ができるのって、何かあったときに相談しやすかったりしますから。

Q.女性ライターが多い中で、自分をどうブランディングしていけばよいでしょうか? SNSの発信などで何か意識していることがあれば教えてください。

姫野:ブランディング……あまり意識したことはないですね。ただ、ネガティブなことは発信しないように気を付けています。

池田:私も、安定した人に見られたいっていうのがあるので、TwitterやFacebookでネガティブなことは書かないようにしています。自分が編集者の立場でライターさんに原稿を依頼するときも安定感のある人に頼みたいので、不安定に見えることは意識して書かないようにしていますね。それはそういうブランディングと言えるのかもしれません。

井上:私の「うどん」は戦略的ブランディングというよりは、結果があとからついてきた感じです。最初はただただうどんが好きで食べていて、ある編集者に「うどんを一日2~3回食べている」と話したら、「それ、わりと異常だよ(笑)」と言われて。それなら写真もたまっていくし、ブログをやろうかなっていう感じで始めました。ブログ記事が増えていくとリサーチ会社の方が見つけてくださって、執筆やテレビ出演などのお仕事につながっているという、ラッキーな感じですね。

田島:SNSなどの発信って、ブランディングをそんなに意識しなくても、自然とその人のテーマとか好きなこととか、パーソナルな部分が出ますよね。結局、普段どう生きているかとか、自分がどういう人間なのかとか、そういうのが大事だよねって話なんだと思います。

「女性ライターの働き方」というテーマで行われた今回のライター交流会は、参加者の9割近くが女性でした。どれだけ女性の社会進出が進んでも、体力面では男性と同じにはなれないこと、妊娠出産を引き受ける性であること、仕事相手に性的対象者として見られてしまうことなど、女性特有の不安や悩みは誰にもあるようです。フリーランスという孤独になりがちな立場だからこそ、ライター交流会のような”一人じゃない”と思える場所が心の支えになる場所なのかもしれません。

(橋本結花+ノオト)

次回は6月17日(土)に五反田 #ライター交流会を開催します。石黒謙吾さんと佐藤友美さんをゲストにお招きして「ライターの生産性アップ~早く書くコツ~」をテーマに、トークセッションを行います。

現在peatixでチケットを販売中です。数に限りがありますので申込みはお早めに!

▼五反田 #ライター交流会 VOL.19 「ライターの生産性アップ~早く書くコツ~」
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