投稿日:2017年3月10日

ライターがブログを運営するメリットと、ブロガーがライター仕事を請ける方法 ライター交流会2016年11月のトークセッションまとめ

2016年11月19日、東京・五反田のコワーキングスペース「CONTENTZ」で月例のライター交流会が行われた。

テーマは、「ライター×ブロガー」。具体的には、ライターがブログを運営するメリットについて、さらにブロガーがライター仕事を請けるにはどうすればいいのかについて、登壇者それぞれのポジションからさまざまな意見が飛び出した。

【登壇者プロフィール】

■奥野 大児(おくの・だいじ)
奥野さん
ブロガー兼フリーライター。200人以上を毎年動員するブロガーイベント「ブロガーズフェスティバル」の実行委員長。自らも技術書執筆・Webライターなどの活動を行っており、人物・IoTやハッカソンイベントの取材やSEOの解説記事の執筆などを行っている。
Twitter:@odaiji

■田下 愛(たおり・あい)
田下さん
ブログ歴の長いフリーランスライター。雑誌、書籍、Webメディアで、ビジネス、政治からサブカルチャーまで幅広いジャンルで執筆、取材に奮闘中。著書に「選挙はエンターテイメントだ!」(HK INTERNATIONAL VISION)がある。最近のおもな執筆媒体は「ねとらぼエンタ」「シネマズby松竹」「スモビバ!」など。趣味はオーケストラでヴァイオリンを弾くこと。石ノ森章太郎作品のファンで「サイボーグ009」と昭和特撮をこよなく愛する。
Twitter:@ai_writer

■朽木 誠一郎(くちき・せいいちろう)
朽木さん
ノオト所属・医学部卒のライター・編集者。ウェブはYahoo!ニュース個人/サイボウズ式ブロガーズ・コラム/ジモコロ、紙はプレジデント・書籍の編集協力などで執筆、PAKUTASOのフリー素材モデル。
Twitter:@amanojerk

■宮脇 淳(みやわき・あつし)
宮脇さん
1973年3月、和歌山市生まれ。 雑誌編集者を経て、25歳でライター&編集者として独立。5年半のフリーランス活動を経て、コンテンツメーカー・有限会社ノオトを設立した。編集者・経営者として企業のオウンドメディアづくりを手掛けつつ、「品川経済新聞」「和歌山経済新聞」編集長を兼務。またフリーランス支援策として2014年、東京・五反田のコワーキングスペース「CONTENTZ」を開設した。今年7月には、夜の社交場としてコワーキングスナック「CONTENTZ分室」をオープン。
Twitter:@miyawaki

●ブロガー×ライター×編集者

宮脇:まずは、それぞれ自己紹介をお願いします。

奥野:奥野大児です。ライター歴は4年ほどで、20年ほど前に本を2冊出したこともあります。ブロガーとしての活動歴は5年ほどで、年に1度、200人規模のブロガーイベント「ブロガーズフェスティバル」を主催しています。今日はどちらかというと、ブロガー寄りの目線で話す感じかな、と。よろしくお願いします。

田下:こんにちは、田下愛と申します。私は、フリーライターとして10年くらい仕事をしていて、ライターを始めると同時にブログを開設したので、ブロガー歴もライターと同じくらいです。私は奥野さんとは逆に、ライターの立場でブログを続けているという感じですね。ブログをやっていることがライター仕事にも大きくプラスになったことがたくさんありました。今日は、ライターがブログを書き続ける醍醐味や楽しさをお話しできればと思います。

朽木:朽木と申します! このライター交流会を開催している有限会社ノオトの社員です。大学生時代にアルバイト感覚でライターをしていて、卒業後に編集者・ライターになって3年目です。学生時代にはブログも運営していました。ですので、奥野さんと田下さんの中間くらいの立ち位置で話すつもりです。どうぞよろしくお願いします。

宮脇:宮脇淳です。有限会社ノオトでは社長業をしつつ、現役の編集者としても仕事しています。フリーライター出身で、2003年から3〜4年くらいブログを書いていました。結局、ライター仕事が忙しくて書けなくなっちゃったんですけど、その時代にブログをやっていた人はめずらしかったので、今もその繋がりが仕事に生きていることはありますね。どうぞよろしくお願いします。

●ブログは好きなことを書けばいい

宮脇:奥野さんがブログを書き始めたきっかけは何だったんですか?

奥野:僕は5年くらい前、まだ会社員だったんです。社内の情報システム屋みたいなことをやっていて、その会社のスタッフのパソコンの面倒を見たりとか、LANを組んだりとか、FAXがつながらなかったりとか(笑)、そういうトラブルに対応する仕事をしていました。で、そういった対処をしたときに、その情報をどこかにメモっておかないと、また次に同じトラブルがあった時に困るな、と思ったのがきっかけですね。何かにメモするんだったらブログに書くか〜ということで、当時はアメブロを使ったのが最初だった気がします。

そのうちに、自分でドメインを取ってみたり、サーバーを借りてみたりするようになりました。当時はアフィリエイトが出始めてきた時代で、ブログを書いてサーバー代くらいになるんだったらいいかな、みたいな意識で始めました。

宮脇:田下さんは、ライター仕事と同時くらいのスタートだったんですよね。ブログスタートのきっかを教えてください。

田下:私も以前は会社員で、ストレスが酷かった時期に、何か息抜きはないかとネットでググって日記サービスを見つけたのがきっかけです。そして書き始めたんですが、その日記サービスが1カ月くらいで終了してしまって……。その後何か他に書けるサービスはないかと探して見つけたのが、今はなき「マイぷれす」というブログサービスです。その時は「ブログ」という言葉も知らず、Web上に日記をつけるくらいの気持ちで始めて。半年くらいしたら「ブログ」という言葉が世間に浸透してきて、友人から「あなたがやっているのブログよね」と言われて、「あ、そうか私ブログをやっていたんだ」と知りました。

宮脇:日記といえば、僕が書いていたブログは「宮脇日記」ってタイトルだったんですよ。いま思うと、なんのひねりもないタイトルですね。のちにアルファブロガーとなる「ネタフル」管理人のコグレマサトさんが、勝手にサブドメインで僕のブログを作って、いきなりログインIDとパスワードを送ってきて、「ライターだから何か書けるでしょ」と。私は請負体質なので、言われたらとりあえずやってみる子だったんです(笑)。

学生時代の朽木は、ブログに何を書いていたの?

朽木:僕はアメブロがブームになったときにブログを書き始めて。「医学生日記」みたいなものを……(編注:朽木は医学部を卒業してライターをしている変わり種)。いま思うと、承認欲求のカタマリみたいなブログでしたね。

今日はテーマが「ブロガー×ライター」ですけど、ブロガーの定義が「自分の生活のログを残すこと」なら「医学生日記」でしょうけど、ライターだとニーズの違う文章を書くことになりますよね。基本的に、自分が書きたいことと、読者が読みたいことと、クライアントが書いてほしいことは、全部違いますから。僕は、ブログ=自分の書きたいことを自由に書けばいいと思っている派です。ただ、今はライターなので、それぞれの立場のニーズがあることを踏まえた上でブログを書くようにしています。

宮脇:「医学生日記」は今でも見れるんですか?

朽木:消しました。よくコメントしてくれる女の子がいて、当時の彼女に浮気を疑われてしまって(苦笑)。

宮脇:「ブログに何を書けばいいのか」って、ライターさんが一番考えることだと思うんですよね。普段はお金をもらって書いているから、依頼のない原稿で何を書いたらいいのかわからないという。

奥野:何でもいいんですよ。ブログには書きたいことを書けばいい。いろんな職業の人がいろんなことを書けるからブログっておもしろいんです。ブログの一番いいところって、多様性だと思うんですよ。有名ブロガーさんが「○○系の記事はたくさん読まれるよ」とか「○○系の記事は広告でお金が入るよ」みたいなことをいうケースもありますけど、そこだけに注目したらブログはつまらない。

ブログっていうのは、朝起きて何をしたってことを書いてもいいし、飲んで悪酔いしてトイレで吐いちゃいましたってことを書いてもいいし、それこそ何を書いてもいいはずのメディアなんです。

女優の涼風真世さんっていらっしゃいますよね。あの方は、毎朝1枚空の写真を撮ってるだけのブログを書いています。それが何年も何年も続いていて、それを読んでいると、涼風さんのファンだけじゃなくて、なんとなく習慣でアクセスする読者がついている。そんなブログもあるんですよ。

「何を書けばいいのか」って話の裏側には、ブログでお金を稼ぎたいのかとか、ブログで有名になりたいのかみたいなテーマもあると思います。ただ、そういうのを一回取り外しちゃうと、本来は本当に何でも書けるのがブログの本質であるはずなんです。

●ライターがブログを書くメリットは

宮脇:ブログ、いまさら初めても遅いんじゃないかとか思っちゃうんですけど、その辺に関してはどう思いますか?

田下:遅いってことはないんじゃないですかね。私はライターさんにブログをやってほしくて、なぜかというと、ライターさんって面白い方がたくさんいるから。ただ、依頼されて書く文章は、クライアントの意向をくみ取ってプロとして書くでしょう。だから、普段の仕事では出さないパーソナルな部分をブログで出してくれたら、もっと輝くんじゃないかなって。

あと、ライター仕事をお願いするとき、クライアントとしてもその人がどんな文章を書くのか事前に知りたいと思うんですよ。名前で検索してブログが出てくればすぐ読むことができますし、これまでの実績をまとめたページがあれば参考にできます。あと、ブログって自分の好きなことを書くからこそ、その人柄もにじみ出ますよね。ライターを探している人にブログを見てもらえれば、こちらのパーソナルな部分を理解した上で仕事をもらえるメリットはあると思います。

宮脇:人柄は出ますよね。これはブログもそうですし、SNSもそうですし。

朽木:「いまさらブログを初めても遅いのでは?」という質問の背景には、今はTwitterもあるしFacebookもあるし、他に発信するところがいっぱいあるのに、なんでわざわざブログもやるのっていう感覚もありますよね。僕は、ライターであれば、いろんな実験をする場としてブログを使えばいいと考えています。

自分が書きたい文章、読者が読みたい文章、クライアントが発注したい文章は違うからこそ、仕事でいつも対象にしない層に対して当ててみる。これが実験的にできるのはブログのいいところではないでしょうか。別に誰にも「これ書け」って言われてないし、お金をもらっているわけでもない。発注者側のニーズを満たさなくていい前提だからこそ、例えば「自分は今までゲームの記事ばかり書いていたけれど、グルメブログを書いてみたら、意外と人気になってグルメライターへの道が開けた」なんてこともあるかもしれない。

ライターさんから、「ブログを始めたいけど、何から書いたらいいかわからない」と言われたら、「何をしたっていいし、万が一、最初はスベったっていいじゃないですか」と答えるようにしています。僕もスベった地獄みたいなブログがいっぱいありますから(苦笑)。でも、何本も何本も書くうちに、数十万PV級の記事が生まれたりするわけです。ブログを始めるのに、早いとか遅いとかはないですよね。

奥野:僕は、自分の執筆記事だけのポートフォリオページを作っていて、編集者さんに出会ったら、「こういう記事を書いているので、よかったら見てください」とURLをお伝えしています。自分の名刺にも、そのブログのポートフォリオページのQRコードを載せていますし。ライターって、日々文章を書いていて、どこの媒体に何を書いたかわからなくなっちゃうこともあるので、実績の整理のためにブログを活用してみてもいいのかなと思います。

●「数」を意識したテーマ設定で脱・ブログ三日坊主

宮脇:ライターさんは、ブログ始めてすぐに書かなくなってしまった、という人が多そうですね。

朽木:お金をもらえないですからね。

宮脇:そうそう。忙しい人ほど、原稿料をいただけるライター仕事を優先させるでしょうからね。そのあたりについて、なにかアドバイスはありますか?

奥野:数の積み重ねが実績になるようなブログテーマを考えてみるといいかもしれませんね。野球で言ったら、打率じゃなくて安打数を意識するみたいな。自分はこのテーマに関して何記事書くことができたっていうのが継続のモチベーションにもなるし、そのジャンルにおける自信の素にもなるんじゃないでしょうか。

記事を書き起こすのが大変というなら、実績を1ページにまとめるのもいいですよね。あとは、商業メディアの完成原稿みたいに書くのではなく、例えばそのプロセスをまとめてみるとか。こんな記事を書いて、取材のときはこんな感じで……というのを1記事独立させて書けば、自分が仕事をしている以上ブログを書き続けられるはずですよね。そうやって、自然にブログを続けていけそうなネタを取り込むといいますか。

●ブロガーがライターの仕事を請けるために

宮脇:さっきの話とは反対に、ブロガーさんがお金をもらえるライター仕事を獲得するためには、どうすればいいのでしょうか?

朽木:今はメディアが本当にたくさんあるじゃないですか。どこでもライターを募集しています。ある程度書き溜めたブログがあるなら、それを見せることがつながりを作る第一歩になるはずです。編集者としては、文章を見ないと善し悪しは検討できないので。

奥野:僕はブログきっかけでライター仕事もするようになったパターンなんですけれども、最初はスマホのアプリのレビューを書く仕事をやりたいなと思っていたんです。なので、まずは自分のブログでアプリのレビュー記事を50~60本書いて載せたんですよ。そして、レビュー記事を掲載するようなウェブメディア何十社のお問い合わせフォームに、記事のURLを貼り付けて送り付けたんですよ。そしたら、「じゃあ、こういうの書いてみてください」っていう具体的なオーダーを送ってくれた方もいて。とにかくブログを見せて、自分の実績をアピールするのがいいんじゃないでしょうか。

田下:そういうのって、たしかにありますよね。私はクラシック音楽が大好きで、オーケストラの団員もやっているんです。以前ブログに「クラシック音楽が大好きです。ヴァイオリンやってます」と書き綴っておいたら、指揮者にインタビューをしてほしいという依頼が来ました。やっぱり好きなことを発信していると、誰かしら見つけてくれるんだな、と。

あと、執筆の仕事は、やはりお金をもらって文章を書いた実績があるかどうかが分かれ目というか一つのラインだと思います。ブログを書いているだけでなく、発注を受けたことがあるかどうか。そういう意味では、単価がよくなくても初心者向けの案件をやってみて、経験と実績を身につけていくのもステップアップにつながると思います。

朽木:それでいうと、僕はいわゆる、「原稿1本2000円」から始めたんですよ。ブログをきっかけに、シンデレラ的に超有名なメディアでいきなり書かせてもらえるはずもなく、なんだかんだ地道に6年やってきたので、決して順調な道のりではありません。最初は学生のときに自分が書いたブログをあちこちに売り込んで、安い案件から始めました。

宮脇:ブロガーさんって、自分の体験を書いたりすることには長けてると思うんですけど。商業ライティングだと、他人に取材してコンテンツを作れるかどうかがものすごく重要なんですよね。ですから、商業メディアで書くことを目指すなら、自分のブログの中でインタビュー記事や取材記事を書いて公開しておくと、編集者には実績として認められやすいと思います。

朽木:ブロガーからライターになる方法って、簡単にいえば3種類あると思っていて。取材して記事を書くこと、物事を分析する記事を書くこと、最後がエッセイ。ライターになりやすいのは、取材をすることだと思います。僕でもなれましたからね。エッセイは「ライター」より「作家」に近いので、かなり狭き門だと思います。ただ、こういう「ライター」「ブロガー」「作家」などの定義の話は難しいですね。

●ライターに求められること

宮脇:そろそろ最後の質問です。プロのライターに求められることって何だと思いますか?

奥野:ブログっていうのは自分メディアなんです。自分が文章を書いて自分が満足すれば、読者が0人でも、評価が0でもメディアとして成立しちゃうんですよね。だけど、お金をいただいて文章を書く場は自分メディアではないので、読者なりお客様なりの求めるものを提供するための技術が必要です。もしブログをきっかけに商業ライティングにも進出したいなら、「人が求めているもの」を認識できる力が必要ですよね。

田下:あと、プロのライターは、正しい日本語を使えるべきなので、「記者ハンドブック」(共同通信社)を必ず買って、常にこれをめくりながら仕事するのも大事ですよね。同じ言葉でも、漢字にするかひらがなにするかカタカナにするか。その表記を「記者ハンドブック」に準ずるとしている媒体も少なくありません。商業媒体で書くときは、自分が自分の日本語を疑うことも大事ですね。文章を書くときに、思い込みで間違った表現を使うことは多々ありますので。

宮脇:そういった部分は、確実にプロとアマの差が出ますよね。そういった心構えとして持っておくべきことって、他にありますか?

朽木:僕はコンテンツに対する柔軟さが大切だと思っています。ブロガーさんからライターになろうとしたとき、それまでは「自分メディア」だったから、自分自身が納得すればいいわけですが、ライターになると他人の目線を意識しなければいけない。それって結構辛いことでもあると思うんです。

僕自身、6年前にライティングを始めたとき、原稿をガンガン直されてびっくりしたんです。編集者に対して、「何て失礼な奴なんだ」「僕が書いた僕の最高の文章になんてことしてくれるんだ」とか、そんな偉そうなことを思ってしまっていて(苦笑)。

そういう気持ちをゼロにしようという話じゃなくて、文章を直されたときは柔軟に、「客観的に読んだ人がそう言っているんだから、そっちの方がいいのかもしれない」と思えるかどうかは大切です。修正を見た上で、「こういう意図があったんですけど、初稿で表現しきれてなかったみたいです。こういう修正ではどうですか?」って、逆にこちらから提案すれば、より良い記事になることもありますから。

あとは、案件の構造を理解する力。この仕事は、どこからお金が流れてきているのか。「本屋で売られる雑誌だから、読む人からお金を取っている」とか、「企業のオウンドメディアだから企業からお金が出ている」とか、「このWeb媒体は広告でマネタイズしている」とか。

そういうことを理解してライティングしないと、「自分が書きたいことが書けない」「編集者にいろいろ言われる」「クライアント企業にわけのわからないダメ出しされる」みたいに思ってしまうことになる。そうやってライティングから離れていく人を、何人も見てきました。

柔軟さや構造を理解する力さえあれば、その中でベストを尽くすこともできるし、自分の中で別の方向へとモチベーションを向けることができると思うんですよ。

宮脇:プロのライターに求められることって、改めて挙げるといろいろ出てきますよね。その中の一つになりますが、実は「コピーする能力」もあるなと思っているんです。いや、これ、コピペ記事を作れってことじゃないですよ(笑)。世の中にあるメディアには、そのメディアのカラーが必ずあります。そうなると、必然的に「媒体の色に合わせて書く」力が必要になる。

初めての媒体、初めての編集部から原稿を依頼されたら、当然ながらライターはその媒体の過去記事を読み込んで研究しなければいけません。キャッチの付け方や文体など、いろんなかき分けをできてこそプロのライターですから。もし創刊したばかりの新しい媒体で過去記事がなければ、編集者との打ち合わせでどんな記事をイメージしているのかヒアリングして、完成をそのテイストにできるだけ近づける。これをしっかり意識すれば、それぞれの特徴をうまくコピーして自分のものにしていけますし、ライティングに必要なエッセンスを理解する能力が身についていくはずです。

●Q&Aタイム

Q:.ブログのタイトルはどうやって考えたら良いか?

奥野:一番わかりやすいのは、個人名を入れたブログタイトルですね。そうするとSEO的に強いし、キャラクターとして覚えてもらいやすい。特定のテーマに関連したブログ名にしてしまうと、それをずらしたくないからこの内容は書けないっていう枷がかかっちゃうので、曖昧な方がいいかもしれません。ただ、ドメインさえ継続できればブログタイトルを変えるのはまったくNGではないので、そこに悩むくらいだったら何でもいいからつけて、早くブログを始めた方がいいと思います。

ちなみに僕個人は、「明日やります」っていうわけのわからないブログ名で、これは完全にフィーリングです。もうあんまり行儀のいいことを書きたくなかったというか、意識の高いことを書きたくなかったので、「今日できることも明日やります」という意識で付けました。

朽木:たしかに、Googleの検索インデックスも数日すれば更新されるので、ブログのタイトルはそんなに考えすぎなくてもいいのかもしれませんね。ドメインは取り直しが大変なので、ちゃんと考えた方がいいですけど。

Q.ブロガーの出口はどこにあると思いますか?

奥野:ライターと違ってブロガーっていうのは、そもそもそれが職業とは限らないんですよね。どこからも1円ももらわないで書いている人もブロガーですし、ブログで生活できるほどの広告収入を得ている人もブロガーです。

「出口」を「お金を稼ぐこと」と仮定すると、基本的なのは、写真を撮るブロガーだったら写真の仕事を得るとか、文章がメインのブログだったら文章でお金を得るとか。それから広告収入、アフィリエイターですね。そして、広報PR的なブロガーさんっていうのもいます。自分のブログで書くことで、PRをする。企業や自治体に発信力を買われるパターンですね。記事広告を作ったり、「○○大使」みたいな広告塔になったりすることもあります。あとは、セミナービジネス。自分が培った知識をブログで発信していって、有料セミナーの入り口にするパターンです。

「出口」としてどこを目指すのかは、ブロガーさんそれぞれが持つスタンスの違いだと思います。アフィリエイトで稼ぐためにPV至上主義でブログを運営する炎上系のブロガーさんは、自治体のPR仕事は取りにくそうですよね。企業や自治体と組めるようなブロガーになりたいと思うのか、200人のアンチと200人のファンからお金をいただけるような収益構図を描くのか。自分がどういう主義なのか、いま一度考えてみるのがいいと思います。

田下:ブロガーというのは、別に書くことに特化した肩書ではないと思うんですね。だから、出口はライターだったり、写真家だったり、イラストレーターだったり、何かのプロデューサーだったり、コンサルタントだったり、人前で話をする人だったり……。将来の肩書は、自分の好きなこと、やりたいことをブログで発信していくことで、どんどん広がっていくと思います。

「書く」という共通項はあるものの、さまざまな違いが浮き彫りになったライターとブロガー。ライターはブログを持つことによって仕事の幅が広がる可能性があり、ブロガーはブログをきっかけにライター仕事を獲得するチャンスがある。今回のライター交流会は、参加者たちにとってさまざまなヒントを得る機会になったのではないだろうか。

(小泉桃子+ノオト)

<関連リンク>

コワーキングスペース・スタジオ Contentzは、2024年4月30日をもって閉館しました。仕事場として、イベント会場として、長らくご愛用いただき、誠にありがとうございました。

有限会社の音

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