投稿日:2019年7月29日

ノオトの編集者って何しているの? 最近のコンテンツ制作裏事情 #ノオト15th レポート(中編)

6月29日に行われた「ノオト15th大感謝祭」。Session2では、ノオトで働く編集者によるグループトークが行われました。普段ノオトの編集者がどんな仕事を担っているのか? ネタ集めから編集まで気をつけていることなど、日々の仕事について話します。

【登壇者プロフィール】

杉山大祐


1987年生まれ。IT企業でウェブサイトやスマホアプリの制作を経験した後、2014年11月よりノオト所属の編集者・ライターに。主にスポーツやガジェット系、ビジネスマン向けコンテンツなどを担当する。テレビゲームからボードゲームまでゲーム全般が趣味。Twitter:@doku_sho

鬼頭佳代


有限会社ノオトの編集者・ライター&五反田のコワーキングスペース「CONTENTZ」管理人。中小企業向けWebマーケティング会社の広報 兼 オウンドメディア担当者を経て、2017年に入社。主な担当ジャンルは、メディア・教育・観光、そして場づくり関連。2019年1月、現場の運営ノウハウをまとめた冊子「コワーキングスペース教科書」を共著で制作しました。土曜出勤、平日1日休みのスケジュールを利用して、宝塚歌劇を観に行く日々。Twitter:@Kayo_Kitoh

水上歩美


有限会社ノオトの編集者・ライター。主な担当ジャンルは、働き方やキャリアデザイン。雑誌編集者に憧れて編集業界を目指すが、学生時代のインターン先でウェブの面白さを知り進路変更。音楽、Apple製品、ライフスタイルなどさまざまな分野のウェブ媒体を経て、2018年7月ノオトに入社。趣味は散歩とライブ。Twitter:@kamiiiijo

宮脇 淳


編集者/有限会社ノオト 代表取締役。1973年3月生まれ、和歌山市出身。雑誌編集部のアルバイト、編集者を経て、25歳でフリーランスのライター&編集者として独立。2004年7月にコンテンツメーカー・有限会社ノオトを設立した。ウェブコンテンツの編集を主軸にしつつ、コワーキングスペース「CONTENTZ」(コンテンツ)、コワーキングスナック「CONTENTZ分室」、エッセイ投稿サイト「ShortNote」の事業継承など、多様な編集活動に取り組む。南海時代からのホークスファン。Twitter:@miyawaki

基礎を繰り返すことがスキルアップの道

宮脇淳(以下、宮脇):本日のノオト15周年イベントに集まってくれている来場者のみなさんは、若いライターや編集者が多いみたいですね。このセッションでは、ちょっとでもスキルアップのヒントになるようなお話ができたらいいな、と考えています。よろしくお願いします。

さて、いま登壇している3人はみんな、ノオトへ転職してきたんですよね。特に杉山はノオトに入ってから編集者になった。

杉山大祐(以下、杉山):僕はもともと、文章を書くのがそこまで得意ではなかったんです。Twitterでノオトの求人をたまたま見つけて、面白そうだなと思ってエントリーしました。完全に未経験の状態でした。

スキルアップとしては、弊社が運営している「品川経済新聞」でネタを探して、アポをとって、取材して、執筆して……といったひと通りのフローを経験できたことが今とても役に立っています。型が決まっている流れをひたすら繰り返したことで、基礎力が身に付きましたね。

宮脇:本当に未経験だったもんね。6年前か……。今思い出してみてもなんで杉山を採用したのか記憶がない(笑)。

杉山:(笑)。チャレンジ枠だったんですかね。

鬼頭佳代(以下、鬼頭):私の前職は、WEBマーケティングの会社です。ちょうどコンテンツマーケティング全盛期で、入社1年目で自社のオウンドメディアを担当することになりました。ですが、メディアづくりに詳しい人が社内にいなかったので、ライティングや編集についてなかなか相談できなくて。それで、「もっと専門的に学びたい」と考えて、ノオトに転職しました。入って一番良かったのは、信頼できる先輩に自分が書いた原稿を編集してもらえることですね。

水上歩美(以下、水上):私は前職でWEBメディアの編集部にいました。編集部に所属していると、そのメディアを盛り上げるためにSNSを運営したりイベントを開いたりするなど、コンテンツをつくる以外の仕事も多くありました。ただ、ノオトに入社してからはコンテンツづくりだけに専念できるので、仕事内容としては少し変わったなと感じています。

宮脇:少し違う目線でコンテンツに向き合っているんですね。

水上:はい。専門性が高くなったので、「よりスキルアップしよう」と、入社後は初心者向けの本を読み返して一から学び直しました。社員がそれぞれ違った案件を抱えているので、難しい案件に出合ったときにどうしたらいいのか、すぐに相談できる環境なのはとても良いですね。

編集者は媒体とライターを繋げる仕事


宮脇:「編集者」って、一言でいうとどんな仕事だと思いますか?

杉山:「企画成立屋」ですかね。以前は原稿を直す職業というイメージを持っていたのですが、最近は企画を実現させるために奔走する仕事だと思うようになりました。

鬼頭:「物事をいい感じに進めてやりきる人」だと考えています。私はコワーキングスペースの運営もしていて、それも含めて編集だと思っているんです。やらなければいけないことや目的は決まっているので、それをどうしたら遂行できるのかを、きちんと考えてやり抜けるのが大切かと。

水上:私は「翻訳家」だと思います。ライターさんが伝えたいものを翻訳し、編集して納品する。そこを上手に繋ぐコネクターのような仕事ですよね。

宮脇:確かに、ノオトは一つのメディアをひたすら育てているわけではないので、日々の仕事はさまざまなコンテンツを作ることで、横の繋がりを作っていくようなイメージがありますね。

「いいね」してくれる人を意識することが企画の始まり

宮脇:改めて質問するのもちょっと変な気分ですが、みんなは「企画を立てる」ときは、具体的にどういうふうに取り組むことが多いですか?

水上:家にいるときはラジオ、TVer、AbemaTVのどれかをずっと流して情報収集していますね。それで、何か面白いと思ったことがあったら、とりあえずメモしています。私は時間をきちんと作らないと企画を立てられないタイプなので、その取ったメモを見返しながらネタを考えています。

鬼頭:私は雑誌から情報を得ることが多いですね。ほかにも、日常で気になったものを写真に撮って、いつでも見直せるようにしておくだけでもあとで役に立ちます。あとは、旅先で聞いたことや経験をきっかけにして企画にすることもあります。足を使うことが多いかもしれないです。

杉山:映画、ラジオ、雑誌などをひと通り見て「ミーハーになること」を意識しています。流行のものをチェックして、それがどうして流行っているのかを考えるようにしていて。

特に、気に入ったものは積極的にレコメンドしていますね。最近は、「テラスハウス」の社内普及に貢献しました(笑)。特定の誰かに勧める際、相手の背景を読み取って、どうすれば興味を持たれるかを考えるようにする。それがそのまま企画になることもあります。

宮脇:ネタそのものは、誰でもきっと持っていると思うんですよ。それを企画に落とし込んでいく方法が人によって違う。

私はネタの段階でみんながどんな反応や感想を持つのか、それを見て企画へと転がすようなイメージをもっています。たとえば、ちょっとした小ネタをSNSに投稿するとき、「この人は、いいねしそうだな」と思いながら発信すると、まんまと反応してくれたら「あ、やっぱりこの人(読者)はこういう返しをしてくれるんだな」なんて。ネット上の何気ない反応が、企画を立てるヒントになることもありますから。

一緒に作り上げる空気感をもったライターさんと働きたい

宮脇:普段、仕事でさまざまなやりとりしていて、「このライターさんとだったら良い仕事できるな」と思うのはどんなときですか?

杉山:企画を持ってきてくれるライターさんはありがたい存在です。たとえ企画自体が通らなくても、違った角度でその企画と近い仕事をお願いしやすいですし、そのジャンルに熱意がこもっていることが、記事からも伝わってきますから。

鬼頭:原稿にコメントを入れたときに、返信してくれるライターさんですね。編集に絶対的な正解はないので、私が入れたコメントに対してどう思ったのかを教えてくれるとうれしいです。一人で作るよりも二人で記事をつくったほうが違った視点が入る。やりとりしていく中で、より良いものが作れていけたらと考えています。

水上:コラムやエッセイの場合は、書き手の過去の経験に基づくものがメインになってくるので、できる範囲で直接ヒアリングして、気持ちや出来事をわかりあえたらいいなと思っています。なので、一緒につくり上げる空気感を持ってくれるライターさんだとうれしいですね。

宮脇:ネットが発達して、やりとりが文字ベースになったじゃないですか。だけど、やっぱり大切なやりとりは対面でやったほうがいいのかなと。それについてはどうですか?

水上:できる限り会いたいですね。実際、ライターさんとは会うことも多いです。

鬼頭:地方在住のライターさんと一緒にお仕事をすることも多いので、旅行や出張で近くに行くときに連絡して、できるだけお会いするようにしています。

宮脇:最近は、直接会えなくても顔が見えるテレビ会議が便利ですよね。私は最近、無料ビデオチャットの「appaer.in(アピーアーイン)」をよく使います。

鬼頭:コワーキングスペース「CONTENTZ」の増床で、テレビ会議用のスペースを社内にできました。オンラインでの会議は、ライター・編集者に限らずこれからもっと広まるんじゃないかなと思いますね。

宮脇:もちろん直接会うことも大切ですが、顔を見て話せるだけでも全然違いますもんね。

より良いものを作るための朱字

宮脇:ライターさんとのやりとりで発生する「朱字」について。これ、普段はどう意識していますか? 先ほどもコメントのやりとりがしたいという話が出ていましたが。

杉山:まず前提として、ライターさんには朱字が入ることを臆せずに、ある程度勢いにまかせて書いてほしいな、と。ライターさん側の立場だと、朱字がたくさん入ると「間違えてしまったのかな」と不安になることもあるとは思うんです。

編集者として保守的な目線で朱字を入れることもありますが、ライターさんにとって「そこは削れないな」などの譲れない部分はありますよね。なので「怒られちゃうかも」ってくらい書いてほしいと思っています。

あと、以前はインタビュー時の雰囲気を壊さないように、口語表現をできるだけ残そうと思っていたんですけど、最近は割と踏み込みますね。読んでいて心地良いことが何よりも大切だよな、と。雰囲気と読みやすさのバランスをうまく取れたらいいですよね。

宮脇:話し言葉って、結構めちゃくちゃだったりしますもんね。本来の意図をどう伝えるかは、編集の技術ひとつで大きく変わってきます。

鬼頭:媒体とライターの間に立つのが編集の仕事だと思うので、ライターさんの個性を生かしつつ、媒体の色を出せる編集を意識していますね。

水上:ただ、コラムやエッセイって朱字を入れにくいんですよね。とはいえ、書き手の気持ちを100%尊重してしまうのも編集者として違うかもしれない。「この書き方だとこう伝わりましたが、合っていますか?」というようなコメントをすることが、私は多いですね。

宮脇:確かに僕もそうしてみなさんにお返しするようにしています。ノオトではスタッフが編集したものを、さらに僕や別のスタッフが再編集する体制を取っているんですよ。一つの原稿をなるべく何人かの目で俯瞰的に見るようにしています。

強烈に愛してくれる人を増やしていきたい

宮脇:次の質問にいってみましょう。数字について。記事のPVとかシェア数とか、みんなは意識していますか?

水上:SNSでのシェアやコメントは少し意識しています。ただ、メディアによってはシェア数やPVを開示してもらえないケースもありますし、気にしすぎないようにしています。

鬼頭:もちろん読まれないよりは読まれるほうが断然いいのですが、数字に追われすぎても良くないとは考えています。ただ、編集者としてGoogleアナリティクスなど最低限のツールは使えていたほうが良いですよね。

杉山:読者からはなるべく良いコメントをもらえるようにがんばりたいとは思っています。ただ、何をやっても叩かれてしまうことがあるのも事実なので、できるだけ嫌われない方法を考えるようになりました。

宮脇:アンチってゼロにはならないんですよね。なので、アンチがいることはちょっとだけ意識しつつも、それよりももっと強烈に愛してくれるファンを増やしていくことを意識したいと、社内でも意思疎通しています。

なんかこう、身内だけでこうやって話すのはやりづらい面もありましたが、新鮮な体験でしたね(笑)。みなさん、ご清聴ありがとうございました。

執筆:佐倉ひとみ 撮影:鈴木しの 編集:ノオト

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